恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「成瀬君っ!!」
もう電車の止まっている2番のりばに、電車に乗っていない成瀬君が1人立っていた。
必死になって走っている私の髪は、汗で顔に張り付いてグシャグシャになってしまっている。
汗をハンカチで拭おうとしたのだけれど、朝にドタバタしていたせいで持ってくるのを忘れていた。制服で汗を拭って、サッと髪を整える。
「来ると思ってた。」
そんな私の様子を見守りながら、成瀬君は少し笑って突然の訪問を歓迎してくれる。
「・・・え?何で?」
「昨日の夜からずっと電話が鳴りっぱなしでさ。何処に行くの?とか何時に出発するの?みたいな事ばかり聞かれたから、誰かが絶対に来てくれるんじゃないかって。・・・それに」
成瀬君は、私服のジーパンのポケットに手を突っ込んで、
「これ、まだ返してなかったから。」
貸した本人が忘れかけていた花柄のハンカチを、私の前に差し出した。
「あ、ありがとう。って、私が悪かったんだけど。」
綺麗に四つ折りされたハンカチをポケットの中に捻じ込む。残された時間は、ほんの少ししかない。