恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「それじゃ、母さんが席で待ってるから。メールも電話もするから返してくれると嬉しい。」
「成瀬君!私、私は・・・」
扉はまだ閉まっていない。体は電車の中には入れないけど、声は届かせることができる。
今こそ、2つ目を言う時だ。私がずっとずっと言いたくて言えなかった想いを全力で伝えよう。
『扉が閉まります。ご注意下さい。』
そんな私の決意をあざ笑うかのように、アナウンスと扉が閉まる前の警告音が、駅構内に鳴り響く。全ての音をかき消して、私の声もかき消して。
きっと昔の私ならタイミングが悪いとか、運が悪いとか言い訳をすることしかできなかっただろう。
でも、今の私の決意は誰にも、何にもかき消せない。これは皆から貰った本物の勇気だ。自分が傷付く事を覚悟してでも、大切な事を伝えたいという、そんな勇気だ。
タイミングが悪い?運が悪い?バカらしい、本当にバカらしい!!
そんな自分に言い訳しかできないニセモノの勇気はとっくに捨てている。
私のするべき事はたった1つだけ。大きな音が私の告白を邪魔しようとするのなら、
「成瀬君が好きだから!!大好きだから!!だから、行かないでっ!!」
それより大きな声で、好きというこの気持ちを伝えるだけだ。
扉が閉まる。気持ちは伝えられた。でも成瀬君からの返事は、私に届くことがなくなってしまった。