恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「成瀬君っ!!」
繋がった瞬間、名前を叫んだ。次に聞こえてくる声が、きっとあの人の声だと信じて。
「もしもし、今、着いた。多分、綾瀬から500kmくらい離れたところかな?」
別れてたった数時間しか経っていないのに、声を聞いただけで、もう泣いてしまいそうになっていた。
でも、それは当たり前だ。離れたくなんてなかったし、もっともっと長い時間を成瀬君と一緒に過ごせると思っていたから。
「・・・バカ。そんなの、離れすぎだよ。」
涙声を我慢する代わりに出てきたのは、憎まれ口。口だけでも強気になっていないと、きっと泣いてしまう。
「あはは、ゴメンな。こればっかりはどうしようもなかったから。」
そんな私の憎まれ口も、笑って許してくれる成瀬君の声は、少し落ち込んでいたような気がした。
わかっていながらも、どうすることもできなかった成瀬君の気持ちが伝わってくる。私と同じように、離れたくなかったと思ってくれていたら、いいなと思う。
「なあ、綾瀬。」
「・・・どうしたの?」
「俺も・・・綾瀬と離れたくなんてなかった。まだまだ一緒に色んな所に遊びに行って、時にはケンカしたり、でもあっという間に仲直りして、また2人で楽しいこと続けて・・・そういう毎日を送りたかった。」
涙声は我慢できた。でも、涙声を作る原因となるものは我慢できなかった。
頬をつたう、生ぬるい液体が涙と気付いた時には、それを止めることができなくなっていた。