恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「だからさ、そういう毎日をいつか手に入れる為に、今度は俺の方から『繋がり』を作るよ。」
涙を流しながら、鼻をすすりながら、ポケットに手を入れてハンカチを取り出して、涙を拭く。
涙を拭いていると、コツリとほっぺに何かが当たる感触がした。
「もしかしたら、もう気付いてるかもしれないけどさ。今日返したハンカチ開いてみてくれないか?」
ゆっくりと丁寧に四つ折りになっていたハンカチを開いていく。四つ折りから二つ折りに、二つ折りから、元の開いた姿に。
「一緒に買い物に行った時、俺が1人でサラダ油買いに行ったことあっただろ?その時に露店で買ったんだ。俺も綾瀬と同じの持ってる。ちょっと大きめだけどな。」
「これ・・・ゆび・・・わ?」
出てきたのは、小さな指輪だった。
ハンカチを手に持っただけではわからない、ハンカチを肌にグッと押し付けて初めてわかるくらいの小さな小さな指輪。
「もう時間も遅くて、店じまい寸前だったから、良いのが残ってなくて・・・俺のも合わせて2つで3000円。安物でごめんな。」
小さな小さな指輪には、その大きさにピッタリの綺麗な青い色のガラスがはまっていた。
気分が良い時に見上げる空の色にそっくりの、どこまでも突き抜けた青だった。
きっと、成瀬君にだって欲しいものはいっぱいあったはずだ。服に靴に美味しい食べ物。お気に入りのアーティストのCDや大好きな作家さんの本。色んなものが欲しかったはず。
でも、お小遣いやバイト代を一生懸命やりくりして、節約した成瀬君が買ったものは、私と『繋がる』為の指輪だった。
こんな精一杯の3000円を、安物だと笑い飛ばせるわけがなかった。