恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「ううん。凄く綺麗だよ。成瀬君、ほんとうにありがとう。」
だから、私は成瀬君に精一杯のありがとうを返す。気持ちを込めて、一言一言をかみし
めながら、ゆっくりと。
「このペアリングを持ってる2人は、いつか必ず再会できるんだってさ。こんな青いガラスにそんな力があるとは、とても思えないけど。絶対に嘘だなと思いながらも、ついつい買っちゃったよ。」
笑いながら話す成瀬君は、自分から嘘に引っかかったことを楽しんでいるかのようだった。
携帯から漏れてくる笑い声を聞いていると、自然と涙は止まっていた。
「でもさ、そんな嘘も2人で本当のことにしよう。きっと、露店のお兄さんびっくりするだろうなぁ。自分のついた嘘が本当のことになるなんて。」
嘘を本当にする自信があるから、成瀬君は自分から嘘に引っかかって、楽しそうに笑う。
私も涙を止めて、笑い始める。私にも、この嘘を本当にする自信があるから。
「・・・よかったらさ、指輪、はめてみてくれよ。・・・できれば、左手の薬指とかが、いいんだけど。」
急に自信を無くした子どもみたいに、声のトーンが落ちる。その声を聞いて、成瀬君は緊張しているんだなと理解した。
「もう、そんなに緊張しなくてもいいのに。ちょっと待っててね。・・・んしょ。」
現実っていうのは、小説や漫画のように全てが上手くいくとは限らなくて。
「・・・あれ?・・・おかしいなぁ。」
ハンカチに隠れるくらいの大きさの指輪は、私の薬指にピッタリはまることはなく、第一関節くらいで止まってしまう。
「成瀬君、ゴメン。私、結構背が高いから、ちょっと指のサイズも大きいみたいで・・・小指にしか入んないみたい。」
行き場を失った指輪は、本来、はまるべき指の左隣にすっぽりと収まることになってしまった。