溺愛ごっこ
客に声をかけられた魔女――亜美は、
「…え、ああ、はい…」

困るヒマがあんなら逃げろや!

「理人、怒ってるね」

「安奈、嫌味なら追い出すぞ」

俺の前に座って、カウンターでカクテルを飲んでいる安奈がククッと笑った。


そもそもの発端は1週間前。

安奈の発言が原因だった。

「ねえ、来週のハロウィン何かやるのー?」

開店準備を手伝っていた安奈が言った。

「ハロウィン?

別に何もしねーけど」

モップで床を掃除していた俺は返した。

「そりゃ、そうか。

お客さんは大人ばっかだしね、大人にお菓子をあげる訳にはいかないもんね」

安奈はグラスをみがいた。
< 52 / 65 >

この作品をシェア

pagetop