百鬼夜行と暴走族 弍



もう遅くて十六夜が本家に到着したときには百鬼夜行は終わっていて天堂は自室に居た


「…ただいま」


自室に入り刀をかけて、天堂の隣に座った十六夜


「おぉ……こい」


天堂が両腕を広げると十六夜は倒れるように胸に抱き着いた。天堂は癒すように頭を撫でていた



「疲れてるな」


「まだ大丈夫、明日は北に飛ばないと…」


「北にか…大変じゃな」


そう言って離れようとした天堂に十六夜は、もう少しとさらに力を強めて抱き着いた。天堂はふっと笑って十六夜に口づけた



「お酌するわ」


「明日も出るんじゃろ?いいのか?」


「うん、ゆっくりしたいの」


笑って出ていった十六夜を少し待つと盆に徳利とお猪口を乗せて持ってきた


室内よりも縁側を好む天堂は縁側に出て座りお猪口を持つと十六夜が酌をしてくれる


心地よい風が吹いて気持ちよく、言葉も無く静かで心が落ち着く


酌をし終わった十六夜は片付けようと盆に徳利とお猪口を乗せると天堂はそっと十六夜の肩を抱いた



十六夜はびくっとしながらも頭を肩に預けるとその手で髪を撫でる



ずっと言葉は無かったが長年一緒にいる二人にはこの時間がとても大切で意味のあるものだと分かっている



言葉を交わすよりもこうして二人で寄り添うことでどれだけ疲れがとれて、幸せになれるか



目を瞑ると知らぬ間に寝ていた十六夜を見て天堂はふっと笑い、そっと抱き抱え自室に寝かせて隣に転がり十六夜を抱き込んで眠りについた





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