百鬼夜行と暴走族 弍
天堂が起きたときには十六夜は居なかった。若干、寂しく感じつつも鳶雄のところへと向かった
「おはようございます、総大将」
「おぉ、調子はどうだ?」
包帯をぐるぐる巻きにされている身体をしきりに毛繕いしていたが、烏丸が挨拶すると天堂が現れたため急いで鳶雄は頭を下げた
「はい、なんとか…十六夜様も心配してくださいました」
「そうか、よかった」
笑った天堂に鳶雄と烏丸は頭を下げた
鳶雄はあの日本中の妖怪の先頭にいる総大将、天堂が気にかけてくれることに嬉しさとおそれ多さを感じていた
「十六夜が今、行ってるからな」
「申し訳ありません。本当ならわたしが行くべきですし、奥様にお手間をとらせてしまって…」
「いや、お前さんが行けば向こうも混乱する…それに気にするな、あいつが好きでしてるからな」
「総大将、ありがとうございます」
藁の塊にとまって礼を言う烏丸に天堂は笑って小屋を出て行った
「あれが、総大将……すごい方だ」
圧巻されたように言う鳶雄に烏丸はうんうん、と頷いて鳶雄の前に来た
「そうだ、あんな器が大きい方はおらん…あの方には十六夜様のような素晴らしい方がお似合いじゃ――鳶雄、いざというときに備えもう休め」
「ああ、烏丸もありがとう」
顔を羽毛の中に埋めると膨らんだ身体が規則的にゆっくり動きだし寝息が聞こえたのを確認すると烏丸は小窓から飛んで行った