百鬼夜行と暴走族 弍
腕を組んで天堂の肩にこてん、と頭を預けると天堂は笑って頭を撫でた
「家まで少しだからな、大丈夫か?」
「うん…」
激しい雨だが反対に二人の心は穏やかだった
「そういや、十六夜と出逢った時もこんな感じだったな」
出逢った時、"あの頃""……
「あの頃は雪だったわね…」
天堂が想いを打ち明け、緊張している十六夜を家まで送った時は雪が降っていて、贈った襟巻きを嬉しそうに触っていた十六夜
…相合い傘をしているとより鮮明に思い出す
「そうじゃな…」
「…」
「…」
「…」
言葉はいらなかった。今は何も話さず、二人はそれぞれ色んな想いを馳せていた
目を瞑り穏やかな心で十六夜は天堂に呟いた
このひとと出逢えたこと
夫婦になれたこと
桜李を授かったこと……
今、全てに感謝して………"ありがとう"