百鬼夜行と暴走族 弍



冬の冷たい風が吹き昼だというのに寒く十六夜は天堂がくれた襟巻きをして、朔の墓の前に立っていた



「朔、昔からこの笛が大好きだったよね…あまり上手くないと思うけど聞いて欲しいな…」



近くの葉っぱをちぎり目を閉じて、口に当てると辺りに細く綺麗な音色が響き渡る





その笛の音を大樹の影に隠れ腕を組んで聴いている者が…






吹き終わり、墓標の名前が彫られている部分を撫でていた。墓標に触れていると心が落ち着く


まるで朔が近くに居るみたいで…




「よお」



近くで聞こえた声に振り向くと大樹の後ろから天堂が現れた。十六夜の隣まで来ると屈んで目を閉じて合掌した


「…ありがとうございます」


手を合わせてくれた礼を告げると立ち上がって十六夜に向き直った




「綺麗だったな…」



草笛のことだと分かって微笑んで頭を下げると天堂は頭をぽんぽんと叩いた


その部分から温かさが伝わっていく





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