百鬼夜行と暴走族 弍
しばらく抱き締めあっていた。天堂の腕の力が緩み、十六夜が顔をあげると天堂は離れた
「悪ぃな、遠慮せんと言ったが十六夜を困らせることにしかならねぇよな」
天堂は自分の考えるままに動くが十六夜を困らせることにしかならない、と自分のことも考えてくれている
このひとはどこまで自分を大切にしてくれるのだろう
まだ出逢って数日だ、そんな自分に…
「ごめんなさい…」
「…何に対してだ?」
「未だにお返事出来ないことも、恋仲でないのにさっきは、その…」
そこまで言うと俯いてしまった十六夜の頭を撫でた天堂は笑った
「何言ってんだ、さっきはワシが抱き締めたからだ。十六夜は悪くねぇ……ワシが好きか?」
好き…
朔のことも受け入れてくれた
抱き締められてどきどきするし安心もする
感じたことのない気持ちだ。初めてで戸惑ったがそうなのだ
恐らく、いや絶対好きなのだ
突然言われて、びっくりしたが目を見て告げた
「……はぃ」
安心したように微笑んでまた十六夜を抱き締めた
「なら問題ねぇ。夫婦になるための後押しだ…夫婦になる決断がつかねぇんだろ?だったらワシは今度こそ遠慮せん、十六夜の気持ちは分かったからな」