百鬼夜行と暴走族 弍



「お話しよっ」


「出掛けること誰かに言ってきた?」


「うん!……いーちゃま、てんどうちゃまと、めおと?にならないの?」


「それは…」


まさかこんな小さな童に言われるとは…不意うちに頬を染めた。雪梛はにこにこして土手に座り十六夜を下から覗き込む


「…母ちゃまがいないから、いーちゃまが来てくれたらすごくうれしいなぁ」


「ありがとう…」




笑顔だったが母のことを話すときは俯いていた。こんな小さい頃から母親が居ない、十六夜と同じだ。だから気持ちは分かるが夫婦になるか分からないため曖昧に笑ってさらさらの髪の毛を撫でていた


「てんどうちゃまも、まいにちいーちゃまに会いたい、って言ってるよ?」


「………え?」


「あたしたちがいーちゃまのことを知らないときは、てんどうちゃまもあまり話さなかったけど、いーちゃまが来るようになってみんなの前で会いてぇってっ。たくさん会ってるのにね?」



穴があったら入りたい、とはこのことか。確かに想いは伝えられていてそのことは百鬼夜行の皆も知っている…だから尚更恥ずかしい



恥ずかしさを感じながらも楽しい話も出来て良かった。だが突然嫌な空気を感じた十六夜が雪梛を茂みに隠した途端たくさんの妖怪に囲まれた


飛びかかってきた蛇に腕を噛まれてしまった



< 326 / 393 >

この作品をシェア

pagetop