死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
「おお!」
と魔法使いから感嘆の声があがる。
私がテーブルに料理を置いていくと、魔法使いはキラキラした笑みでそれらを見つめる。
「どうせ、まだお昼食べてないんでしょ?私も今からだから、ついでに作っただけよ!」
「わー!ありがとうございます。こんなにきちんとした食事は久しぶりです!」
嬉しそうに笑う魔法使いを見て、私は自然と顔が赤くなるのがわかった。
「久しぶりって…アンタ、いつも何食べてるのよ!」
照れ隠しで、語尾がつい強くなる。
「えーと…?なに食べたかなぁ~」
自分のことなのに、考え出してしまう魔法使い。
「基本、あの人の人使いが荒くて、忙しくて食べる暇なんてないんですよねー」
そう言いながら、私の作った料理を食べ始める。
「あ!でも、昨日のパン屋の姉妹さんから頂いたパンは美味しくいただきました」
もぐもぐと口を動かしながら、次々に料理を口に入れていく魔法使い。
「もうちょっとゆっくり食べなさいよ」
注意を入れてから、私も席に着き、食べ始める。
「…さっき、言ってた『あの人』って、誰のこと?」
先ほどの会話の中にあった、そのワードが気になり、魔法使いに訊ねる。
「ああ…んぐっ。あの人のことですか?…もぐもぐ」
尚も口も手も休まず、喋り始める。
「僕の上司ですよ。ん?上司でいいのかな?」
いや、でも…。なんてブツブツ呟く。
そんな様子を見ながら、私は「ふぅん」と、お城のお偉いさんかしら、なんてぼんやり考えながらフォークで目の前の野菜を突き刺した。
うん。我ながら美味しくできてるかも。なんて自画自賛する。