死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
「そうです!あの人の頼みはいつもめちゃくちゃすぎるんです!無理難題な仕事をいつも、いつも…」
どんどん俯いていったかと思ったら、「たがら!」と突然、顔を勢いよくあげる魔法使い。
「早く、僕を…僕を殺してくださいぃぃぃぃ」
わんわん泣き喚き始める彼。
ああ。また始まった、とげんなりする私。
「あのねぇ!前から言ってるけど、私にアナタは殺せないの!」
ダンッと机を両手で叩く。
「アナタ、リストに載っていないでしょう…」
と言いながら、未だに喚いている魔法使いを横目にリストを取り出し、パラパラとページを捲る。
捲っている途中で「ん?」となる。ある一ページで目が止まる。
昨日の夜、確認した時にはなかった名前が載っていた。
今日の朝、更新されたのだろうか。なんて考えながら名前を見て、ギョッとする。
「ルルベル=ダイ=マオー=ベルゼクス18世………って…」
リストを持ちながら、ブルブルと手を震わせる。
「魔界の、魔王のことじゃないのーーーーーーーっっっ!!!!」
それはもう、叫んだ。
だって、だって、魔王がリストに載っているのよ!!?
いや。たとえ魔界の者だろうと、死神リストに載ることは、希にあるけど………!
魔王は、ないでしょうっ!?ありえないでしょう!?
返り討ちにされてしまうんじゃないか、と不安が襲う。
そんな、魔界の頂点に君臨する君主の命を奪う死神の仕事を黙って見ている訳がなかろう。
ああ…っ!と頭を抱える。
そんな私の様子を見ていた魔法使いは、目をぱちくりとさせていた。
「次のお仕事の相手、魔王なんですか?」
と平然と訊ねてくる。
「そ、そうよ!!」
半泣きで、半ば叫ぶように言うと魔法使いは、うーん…と考え込んでしまった。
今は、アンタじゃなくて私が考え込む時でしょう!?とツッコミを入れたくなる。