死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
ふと、大きな扉の前で魔法使いが立ち止まった。私も彼の隣りで立ち止まる。
「こちらです」と言った後、扉をノックし、彼は扉を開ける。
私をエスコートしながら、部屋の中へと入って行く。
部屋の中には、大きな豪奢なソファーがあり、誰か座っていた。
「ああ、お主か」
部屋に入って来た私達に気付いたその人物は、対して気にもせず、手に持っていたカップに口をつける。
「ご機嫌いかがですか?」
とにこりと笑いながら、訊ねる魔法使い。
「うむ。昨日と変わらぬ」
なんだか偉そうな口ぶりだわ。なんて考えながら、その人物をジッと見つめる。
黒髪に黒の瞳。黒いドレスを着た、小さな女の子。
「わらわに何か用か?魔法使いよ」
チラッと私を見た後、魔法使いに問いかける女の子。
「彼女をご紹介しようと、思いまして」
私を一歩前に出す。
「彼女は、死神さんです」
…………。
なんつー、簡単な紹介だ!!と文句を言いたくなったが、よく考えてみたら、確かに他に言うことはないな、と思い口を紡ぐ。
「何!?死神だと!?」
ガシャンと、カップをテーブルに置く女の子。
「わ、わらわに何の用じゃ!!」
焦った様に早口で言う、その女の子は威嚇するような目を私に向ける。
「え、えっと…」
勝手に連れて来られて、勝手に彼女に会わせられた私は言葉につまる。
「死神さん、彼女が魔界の魔王様ですよ」
魔法使いは、平然と言ってのける。
「は?」となる私。
慌てて彼女に目を凝らす。
どうみても、ただの幼女にしか見えない。まぁ、言葉遣いが少々変わっているとは思うが、魔王になんて到底見えなかった。
「そんなわけあるはずないでしょうっ!?」
魔法使いに詰め寄る。
「こんな女の子が、魔王ですって?んな、まさか…」
「図が高いぞ、死神!わらわが、魔界の王、ルルベル=ダイ=マオー=ベルゼクス18世だ」
ふんっ!と腕を組み、不機嫌そうな幼女…いえ、魔王がいた。