死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
あれから数年後。
「お待ち下さいぃぃ!!」
「待たない!」
「僕を、僕を…殺してくれぇえ!」
「いやぁぁぁあああああ!!」
緑の生い茂る広い草原を全速力で駆ける。
1年前、私はこの死にたがりの男に出逢ってしまった。
何なの!?辛さを分かち合う人って…、こいつ!?こいつのことなのーーーっ!?
「おばあさぁぁぁぁあーーーん!」
今頃天界で、あの時と同じような微笑みを浮かべているであろう、おばあさんに向かって叫ぶ。
…まぁ、返事があるわけではないのだけれど。
「どうかお願いです!僕を抹殺し…!」
そんなとき、リンゴーン…リンゴーン…と遠くに見える城の時計が鳴り響いた。
「ああ!仕事の時間がぁ…っ!!」
いつの間に追い付いていたのか、私のマントの裾を掴んでいた男。
私は、マントをぐいぐいっと引っ張る。
「今日も、君が僕を殺してくれくれないから、仕事に戻らなくちゃいけないじゃないかぁっ!」
「し、知らないわよ!あなたの都合を私に押し付けないでくれる!?」
もうっ!と踏ん張りマントからこいつを引き剥がす。
「ああっ!疲れる。本当に嫌だー」
頭を抱えて、叫び出したかと思えば、仕方がない。と言ってパチンッと指を鳴らすと、ホウキが突然私達の前に出現する。
はああぁぁー。とからだの中の空気すべて吐き出すかのごとく盛大な溜め息をついたあと、男はホウキに跨がる。
「また後で、今度こそ僕を殺していただきますからね!?」
もう何度聞いたかわからない捨て台詞を言った後、彼はホウキに乗り、すい~っと空へ飛び立っていった。
そう。彼は、魔法使いだ。