死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
Ⅲ.キングと死神ちゃん



あれから、数日が経った。



魔王は、元々、暫く下界のこの城に滞在する約束だったらしく、必然的に私も、魔法使いの計らいで城に滞在することとなった。


以前、魔法使いが迎えに行っていた客人とは、この魔王のことだったらしい。

何故、魔王がこの城に招かれているのかは、まったく知らないが。まぁ、私が干渉すべき事ではないので、魔法使いにも魔王本人にも聞かないでいる。



「おい、死神!」


ベランダに置かれた椅子に座り、リストの確認をしていた時、部屋の中に居た魔王に呼ばれる。



「何?どうしたの」


魔王といえど、かなり年下の、しかも子どもに敬語を使うのが嫌だった私は、普段通りの話し方で彼女と接することにした。
はじめの内は、「死神のくせに生意気だ!」と文句を言っていたが、諦めたのか馴染んだのか知らないが、何も言ってこなくなった。



「死神!これを読んでくれ!」


そう言って、魔王が差し出したのは一冊の絵本。
表紙には、『世界征服』と、子どもが読むような絵本のタイトルとは思えないことが書いてあった。



「………………」



何も言わない私を不思議に思ったのか、首をかしげる魔王。
こういう仕草は、ほんと可愛いんだけどなぁ。とぼんやり思う。



「わかったわ。読んであげる」


魔王から絵本を受け取り、2人でソファーに座る。


「むかし、むかし。とある世界に孤独な魔法使いがおりました。彼は、国の王様なのにもかかわらず、それでも飽きたらず、世界を征服しようと目論んでいました………」








暫く読んでいる内に、左側からズシッと重みが。読むのを止め、隣りを見てみると魔王が寝てしまっていた。


これじゃ、監視っていうより子どものお守りみたいじゃない?なんて思いながらも、魔王の頭を膝に乗せ、マントを掛けてあげる。




あれから、天界に問い合わせた所、確認をするまでは暫く時間がかかるとのこと。なにやら、天界でも騒動が起きているらしい。

なんでも、天使が堕天使に成り下がったらしい。この世界でいう堕天使とは、天使が魔界に堕とされること。理由は様々だが、今回は、その天使が魔界の者と通じていたとのこと。天界の者が魔界の者と連絡を取り合うのは御法度とされている。


これは、暫く騒動は続きそうだと私は見込んでいる。堕天使なんて、滅多に現れないから。


よって、私の魔王監視は、暫く続きそうだ。




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