死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
「では、僕も行きます」
いつもの笑みを浮かべて、魔法使いも部屋から出て行った。
「…………」
何だか、嵐が去って行ったわ。なんて、思う。
あのキングが、以前魔法使いが言っていた『あの人』なのだろう。確かに、あの人が上司だったら、仕事も大変だろう。魔法使いに少し同情する。
「んーーー」
ふと、声が聞こえ。下を見ると魔王が目を覚ましてしまったようだ。
そりゃ、あれだけ騒がしかったのだから、起きてしまうだろう。
目をごしごしと、擦る魔王。まだ完全に覚醒しきっていない様子だ。
「!!」
「わわっ、」
突然、ガバリと上体を起こした魔王に膝枕をしていた私は、驚く。
「わ、わらわは、寝ていたのか!?」
キョロキョロと辺りを見回す魔王。ふと、私がかけてあげたマントに気づいたらしく、マントを握る。
「こ、これはお主のか?」
「ええ」
頷くと、俯いた魔王が何か小さな声で呟く。
「………とう」
「え?」
聞こえなくて、聞き返すと、勢いよく顔をあげる。
「ありがとうと、言ったのだ!!!」
よく見ると、魔王の顔が赤くなっていた。
「ふふふっ」
思わず笑ってしまうと、魔王がマントを私の顔に被せる。
「わ、笑うな!この魔王が、お礼を言っているのだ、有り難く受けとれ!」
あくまでも、強気な魔王にマントの下で、更に笑みが溢れる。