死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
Ⅳ.魔界と死神ちゃん
「死神!起きるのだ!」
「んーー?なに…」
寝ていたところ、魔王に体を揺さぶられる。まだ意識があやふやの中、とりあえず返事だけする。
「ちゃんと起きるのだ!!」
「まだ眠いのよ…」
「わらわが起きているのだ、お主も起きるのだ!」
なんだそりゃ。と思ったが、これ以上は魔王の機嫌を損ねてしまいそうなので(実は一度、機嫌が最高潮に悪くなった魔王に痛い目に合っている)、渋々起き上がる。
「どーしたのよ?」
珍しく早起きの魔王に問いかける。
「キングから聞いたのだが、今日は、城下町でお祭りがあるそうなのだ!死神、わらわを連れて行ってくれ!」
ニコニコと嬉しそうな魔王。よっぽどお祭りが気になるらしい。早く早く!と、私の袖を引っ張る。
キングめ、余計な情報を…と、内心毒づく。
「わかったわよ。連れて行ってあげるから、取り敢えず、手を離しなさい」
「本当か!?行ってくれるのか!?」
「行きたいんでしょう?」
「うむ!すっごく行きたいのだ!」
掌を握りしめ、自分の胸の前でブンブン振る魔王。そして、私がベッドから抜け出すと、わーい!と言って、私から離れる。
子どもだ…。でも、なんだか微笑ましかった。
「じゃぁ、早く支度してきなさい」
はーい!と元気よく駆けて行く魔王を見送った後、私も支度を始める。
城下町のお祭りなんて、実は、私も初めてだったりする。そもそも、こんな城の方まで来たことがなかったので、当たり前といっちゃ当たり前なんだけど。
魔王ほどではないが、少し私も楽しみだったりする。