死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
ふと見えた魔法使いの横顔に、ブルッと身震いした。
…なんて、冷たい瞳をしているんだ。
アイツ、あんな目をする人だっただろうか。
向かってくる悪魔をことごとく凍らしていく。何とも感じていないかのように。
そこで、昨晩キングが言っていたことを思い出す。『アイツは、冷酷だ』と。
…ああ、キングが言っていたことは、本当なのだと実感する。私は、本当に魔法使いの一片しか見ていなかったのだと知る。ほんの少し、そのことにガッカリしている自分がいることに、驚く。
別に、魔法使いのすべてを知ろうだなんて思ってはいない。ただ、私の知らないアイツがいたことが信じられないのだ。
「死神!」
魔王の叫びに、思考を戻される。
「上だ!」
後方の魔法使いにばかり気を取られ、上にいた悪魔に気が付かなかった。
一匹、こちらに猛スピードで向かって来る。手には、槍。
マズイ!と思った時には、悪魔は槍を、あろうことか、魔王に向かって投げつけてきた。
「魔王様!」
魔王を守るように、抱き締める。
お互いにギュッと目をつぶる。
……しかし、そんな時、カキンッとすぐ近くで金属のぶつかり合う音が聞こえた。
そっと目を開けてみると…
「やぁ、無事かい?お姫様たち」
「き、キング!!」
先程の槍を受けとめたのか、キングの手には剣が握られていた。当の本人は、いつもの爽やかな笑顔を浮かべていた。
「お、お主、何故!?」
魔王も驚いているようだ。
「女の子のピンチに駆け付けるのは、当たり前だろう?」
ははは。なんて笑っているキング。
「…………」
キッとキングを睨み付ける。
「おっと、死神ちゃん。睨み付けないでくれるかな?」
なんてやり取りしている間に、先程槍を投げてきた悪魔が目の前に降り立った。
「わぁお!お出ましだね」
なんて、軽口を叩くキング。
「お、お主!何故、わらわを攻撃してくるのだ!」
魔王が悪魔に向かって問いかける。
「我々ハ、今ノ魔界ノ情勢ニ、反抗スル者、新シイ魔界ヲ創ル。ソノ為ニハ、アナタガ邪魔」
まるで機械のような喋り方のソイツは、話しきると、間合いを詰めてきた。
キングが庇うように私たちの前に立つ。
「それは、聞き捨てならないねぇ」
魔王は、ショックを受けてしまったのか、それとも…怒りを覚えているのか、ブルブル震えている。
「邪魔者ハ、去レ!」
悪魔が一気にキングに向かって来る。