死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
兵士の誘導で、城の中へ戻って来た。
ここ数日、この城で過ごしていた所為か、なんだかホッとした。
魔王も同じ気持ちなのか、強張っていた顔が少し緩んだように感じる。
「こちらの部屋でお休み下さい。わたしは、扉の外で控えておりますので、何かありましたら、何でも仰って下さい」
では。と兵士は部屋から出ていった。
「一体…、何が起きているのだ」
ソファーにドシッと腰を掛ける魔王。その瞳は戸惑いに溢れていた。
「……きっと、何かの間違いよ。魔法使いや、キングが何とかしてくれるわ」
「ふっ。わらわの力不足だったのだろうか…」
自嘲気味に笑い、そのまま魔王は黙り混んでしまう。
「…………」
私も、何と声をかけてやればいいか分からず、自然と口を閉ざす。
さっき、キングは、大臣が魔王を狙っていると言っていた。
その大臣については、噂だけは、聞いたことがある。
まだ下界と魔界で、争っていた頃、当時の魔王と共に悪逆非道なことを繰り返していた人物だ。
次期魔王候補へと登りつめたが、魔王となることは叶わなかったらしい。そして、現在は大臣の位に。
そこから、何となく理由は想像がつく。
今度こそ、自分が魔王となり下界と魔界、両方を手に入れるつもりなのだろう。今の魔王は幼い子どもだ。行動を起こすなら、今しかないだろう。
「のう。死神…」
今まで黙っていた魔王が弱々しい声で呟く。
「わらわでは、魔界を治めることはできぬのだろうか…。下界の者と仲良くすることは、できぬのだろうか…」
「魔王様……」
そんなことない。そう言おうとした時、
「そうでございます。魔王サマ」
突然、私たちのどちらでもない声が部屋に木霊した。
「誰!?」
私は魔王の側に寄り、守るようにぎゅっと引き寄せる。