死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん




しかし、鎌が振り下ろされることはなかった。



「………!!??」



大臣の動きがピタリと止まる。



「な、何故だ!!?腕が動かん!」


「はぁ。…当たり前でしょう?死神の鎌は、死神にしか使えない」



体に力がだいぶ入ってきたので、私はよろよろと立ち上がる。



「それにね。その鎌、『オルカ』は、私の言うことしか聞かないの。とっても、デリケートな子でね、なかなか私にも懐かなくて、ちゃんと使えるようになるまで苦労したわ…」


自分で言っといてなんだけど、様々な苦労を思い出し、少しヘコむ。




「…オルカ、おいで」


気を取り直して、大臣の手の中にあるオルカを呼ぶ。

一瞬にして大臣の手から消えと思ったら、瞬時に、私の手元にオルカがきた。



「おかえり、オルカ。…ごめんってば。怒らないで」


不機嫌オーラが漂うオルカを撫でながら謝る。ほんと、気難しい鎌で扱い方に、困るわ。


オルカが大人しくなったのを確認した後、大臣を睨み付ける。



「くそっ!まぁ、いい。別に死神の鎌でなくとも……!!!」


大臣が途中で言葉をきる。

どうしたのかと、様子を伺っていたら、みるみるうちに大臣の足元が、凍っていく。


「何が起きているんだっ!」



体を捩ったりして暴れる大臣だが、そうしている間にもどんどん体が凍っていく。終には、腕ごと剣まで凍り、顔から下以外はすっぽり氷に覆われてしまった。



「何なんだ!くそっ!」


「…まったく、本当に人使いが荒い」


「魔法使い!」




焦ったような大臣の叫びが聞こえたと思ったら、その後すぐ、扉の方から魔法使いが姿を現した。


「くっ」



大臣はまったく身動きが取れず、諦めたように項垂れる。その顔は、苦渋に満ちていた。



「魔王様。ご無事ですか?」


「う、うむ…」



魔法使いは、直ぐ様魔王の所へ駆け寄り、怪我がないか確認する。


一方、魔王は、未だ状況に追い付いていけてないのか、どこか上の空だ

私も、突然の魔法使いの登場に少し驚いている。






その後、すぐに城の兵たちがやって来て、氷漬けの大臣を5人がかりで運んでいった。













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