死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
「ところで、その女性は?」
私が、黒服メイドさんを指差して言うと、その人はペコリと頭をさげ、簡単に自己紹介をしてくれた。
「はじめまして。わたくし、魔界で魔王様の身の回りの世話をさせていただいております。メイド悪魔です。この度は、死神様にもご迷惑をおかけ致しました」
「あ、い、いえ…」
ご丁寧にどうも…。と心の中で呟く。
「お主、何故ここにいるのだ!」
魔王が尚も驚いた様子で訊ねる。
「魔王様…。黙っていて申し訳ありません。実はわたくしども使用人は、大臣の不穏な動きに気付いていたのです」
「なんだと…!?」
「このままでは魔王様のお命が危ないと感じたわたくしたちでしたが、自分たちだけの力では、どうすることもできず、ユイ様にお願い致したのです」
そう言いながら、キングの方を見るメイド。
「彼女からお願いされちゃぁ、断れないからねぇ」
ニコニコと笑うキング。
「あの、話の途中で申し訳ないんだけど…。『ユイ』って…?」
先程、メイドの言った『ユイ様』というのが気になり、思わず話の途中で聞いてしまった。
「ん?ああ、私のことだよ」
キングがさらっと言う。
「や、やっぱりそうなの!?もしかしてと思ったら…」
メイドとキングの様子からしてそうだとは思ってたけど。
「死神ちゃん、自分のいる世界の王様の名前くらい知っておこうよ…。私の名前は、ユイ=キング=ディスワールド=ラストバーク」
覚えておいてね。と私に向かってウィンクするキング。
「……今まで通り、キングで覚えておくわ。ところで、アナタたちの関係って…」
「彼女は、私の可愛い子ちゃんの一人だよ」
魔界にまで女を作ってるのか!?と、愕然する。