死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
Ⅴ.同盟と死神ちゃん
「さて!魔王ちゃん。ウィッチが氷漬けにしてしまった、魔界の者たちは、どうする?あと、大臣だね」
気を取り直し、キングが魔王に訊ねる。
そうだ。まだすべて片付いた訳ではなかった。
「そうであったな。お主たちで捕らえてくれていたのだったな」
「あ。そういえば、大臣の手下の堕天使がまだいるはずだわ!」
何か忘れていたと思ったら、あの堕天使のこと、すっかりキングたちに伝え忘れていたわ。
と思った矢先、後ろから肩をとんとん、と叩かれた。
「それなら大丈夫ですよ、死神さん」
「え?」
肩を叩いてきた相手を見ると、そこには魔法使いがいた。
「この部屋に来る途中、見付けましたので、安心して下さい」
凍らしたんだな…。
ニコニコしている魔法使いを横目で見た後、軽く返事をし、魔王に視線を移す。
「堕天使の方は、恐らく天界で処理するだろうから、きっと大丈夫ね」
「う、うむ…。まさか天界の者にまで手が及んでいたとは、大臣も手の込んだことをする」
はぁ。と、驚きと呆れの混じったため息をつく魔王。
それはそうでしょうね。魔界と天界なんて、ほぼ接触が皆無だったのに等しかったから。お互いに毛嫌いしていたようなものだし。
「魔王様、後程魔界から兵たちが来ますので、一先ず彼らに大臣たちを魔界に連れ帰って頂きましょう」
「うむ。そうだな。あ奴らの処罰は帰ってから決めるとしよう」
「はい」
魔王とメイドたちが話している間、私は魔法使いに話しかける。
「氷漬けになった悪魔たちって、あれ…生きているの?」
「ええ。生きていますよ。襲って来た者たちといえど、魔界の人たちですからね。無益な殺生はしませんよ」
動きを止める程度の攻撃しかしていないようだ。
まぁ、あれでみんな死んでます。とか、言われても後味悪いし、少し安心した。
そんな会話をしていたうちに、キングが呼んだ城の兵士が来て、悪魔メイドと共に部屋を出て
行った。
恐らく、魔界の兵士を迎えに行くのだろう。
「じゃぁ、私は国民たちに説明をしてこなくては、いけないな」
「き、キング!わらわも連れて行ってくれないか?下界の者たちに詫びを入れたい…」
「……いいよ。一緒に行こう」
不安そうに瞳を揺らす魔王に対し、キングは優しく笑った。