死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
城の3階にあるバルコニーに出ると、目下は既にたくさんの民衆で埋め尽くされていた。
キングと魔王と一緒に、私も付いて行かせてもらうことにした。もちろん、キングの側近である魔法使いも一緒だ。
キングと魔王が民衆たちの前に顔を見せる。私と魔法使いは、その少し後ろに控える。
人々がざわめく。
スッとキングが片手を挙げると、人々の声が止んだ。
「下界の民たちよ、此度はすまなかった。すべて魔界の王である、わらわの失態だ。本当に申し訳なかった」
魔王が民衆に向かって頭を下げる。
「あんな子供が魔王?」や「まだ小さな子供じゃない」などといった声が民衆からあがる。
魔王は顔をあげ、民衆を見回す。
「…わらわの未熟さが招いてしまったのが、此度の原因の発端だ」
民衆のざわめきに負けないしっかりとした言葉で話しを続ける魔王。
「此度のことで下界の者たちには、恐い思いをさせてしまった。しかし、魔界の者たち皆を嫌わないで欲しい。図々しい願いだとは承知している。だが、魔界の者たちは、常日頃から下界の者たちと親しくなりたいと願っておるのだ」
懸命に言葉を発する魔王。民衆たちも誰一人喋ることなく、魔王の話しに耳を傾けている。
「わらわが、もう二度とこんなことにはさせない。…どうか!魔界の者だからと邪見にせず、仲良くして欲しい。こんな騒動を起こしておきながら、むしがよすぎるかもしれぬが、頼むのだ」
そう言い終えてから、魔王は再び頭を下げる。
民衆からは、どよめきが起こっている。魔王の言葉に、戸惑っているようだ。
人々の反応を見てか、今まで黙っていたキングが、一歩前に出る。
「今回の騒動は、魔界の一部の者の起こしたことです。その者たちを二度と我々には近づけさせないと、魔王は約束してくれました。ここらで、良いではないでしょうか、下界は魔界とこれから友好関係を築いていきませんか。今までの概念を捨て、互いに支え合っていきましょう」
いつものちゃらんぽらんな話し方ではなく、しっかりとした口調のキング。
滅多に城下の方まで来なかった私は、初めてキングの王様らしい姿をみた。
キングの言葉に、次第に人々から拍手が起こった。