死神の羨望
自殺の真似事、他人を巻き込む自分勝手な奴を殺めてしまった罪悪感はあっても、それ以上に、“報われた気がした”のだ。
今までの葛藤が取り払われ、吸った息の新鮮味を肺から感じられる“生きた心地”が、初めて芽生えた気さえもした。
この時に、自分が壊れていると川堀が気付いたのは自明の理。
死神として、いや、人の名を冠することさえも出来ない行為を、平然とやってのけたのだ。
もう、後戻りは出来ない。
我慢、しなくていいのだ。
自殺の真似事をする奴を傍観する時は終わり、川堀は自らの手で、死に損ないを殺め続ける。
このことが誰かに伝われば、ただでは済まない。死神から除籍させられるか、あるいはもっと重い罰があろうに、川堀は壊れたままでいた。