死神の羨望
「自己紹介したことあるか?すまないな、人の名を忘れたりなどしないのだが……。長生きしていれば、度忘れなんてのもあるらしい。お前の名は?」
厳しい顔つきは、端整な美女であるがため、彼女の第一印象は『冷たそう』と見受けられるが、話せば何てことはない――いや、端から見る分にも、彼女は優しすぎると受け取ろう。
自他共に認めるお人好し。
彼女――五十鈴(いすず)については、噂でのみ知り、遠目から見るだけであったのに。
「私に、何か……ご用でしょうか」
こうして目の前に立たれたならば、逃げ出したい気持ちにも駆られた。
太陽がそこにあるみたいだ。適度な距離あってこそ居心地が良いのに、こんな近くでは、身が焼かれてしまう。