淫らな月
小夜さんが髪を切ってあげると声をかけてくれた・・
今日は私の17回目の誕生日・・
悲しそうに兄を見ていて私の方も同じように見た・・
すぐに笑顔を作ってそう言ってくれた・・
彼女は兄と私の関係を知っているのか?
怖くて聞けない・・
兄のことだ、上手く納得させてるのかもしれない・・
次期族長である兄に逆らうことなんて出来ない・・
愛してはいるだろうが・・そこには畏れもある・・
彼女には嫌われたくない・・
私の特異な外見を受け入れてくれている数少ない人だから・・
私の特異な外見を知っているのはこの屋敷に出入りしている人たち
一族の父の側近の人たちなど限られた人たちだけだ・・
小さい頃から兄に変装するように教え込まれた
小学校入るまではこの屋敷から外に出なくても済んだが
小学校に入ってからはお前の特異な外見は人の関心をよぶ
ほとんどが悪意だろう・・研究対象にされるかもしれない・・
変装をしてあまり深く人と関わらないことだな・・
兄の言うことは正しいだろう・・
赤い髪に赤い眼なんて・・
私は変装をして友達も作らなかった・・
今までで初めてかもしれない・・美桜ちゃん達とのことは・・
私の外見や満月の夜の秘密・・一族のこと・・
話したい・・でも受け入れてくれないだろうと思うと言い出せない・・
それが私に嘘をついてるような罪悪感を与えれる・・
人と関わりを持ったのが間違いだったのかな
知られて拒絶されたときのことを考えると恐い・・
そんな事を考えてると小夜さんが何か話しかけてきた
「えっ・・ごめん・・ボーとしてた・・何か言った?」
「梅香ちゃんって好きな人いるのって聞いたの」
「好きな人?」彼のことが思い浮かんだ
でも・・諦めよう・・そう思えば過去のことに出来るかもしれない・・
「ううん・・いないよ」
「本当に?せ、誠一さんのことは?」


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