淫らな月
紅は死ぬ半年前ぐらいから体調が悪いと私を拒むようになった
たぶんそのころからお前がここに出入りしてたんだと思う・・
初めは本当に体調のせいだと思っていた
度重なるとおかしいと思いだした・・
研究所に行ったふりをして
様子を見ることにした・・
夕方・・高校からの帰り・・
お前が紅のところに遊びに来た
仲良くお互いを自分たちだけの呼び名で
べに・・まことさんと愛おしそうに呼び合い
笑いあう二人を見て
愛し合っているのが分かった・・
嫉妬でどうにかなりそうだった・・
私は気づかないふりをして紅を脅した
一族同士で女を取り合って
争っているものがいる
私は留守がちだが心配ない・・
族長の持ち物、特に女を取ったものは
粛清の対象になる
一族で知らない者はいないから
そんなバカなことをする者はいないだろうと
紅はお前を受け入れなかったのではない・・
私が受け入れさせなかったんだ・・
お前は私のふりをして紅を後ろから犯したと思っているだろうが
紅が気がつかないわけはないんだ・・
そんな抱き方を私はしたことがないから・・
お前の事を愛していたから拒めなかった・・
受け入れるわけにはいかない・・
気づかないふりをしたんだ
私の脅しのせいでお前を遠ざけたのが
つらかったんだろう・・
紅はその3か月後死んだ・・まだ26歳だった・・
死因は子宮外妊娠だった・・妊娠3,4か月だったそうだ
誠一・・お前との子だ・・
紅はその前後私を受け入れなかったから・・
ひどく痛かったと思う・・
でもお前との子だとばれるとお前は粛清される・・
我慢して手遅れになってしまった・・
紅はお前の事も本当に愛していた・・
お前は汚くないんだよ・・
梅香の事を自由にさせてやれ・・
そしてお前も紅とのことを
過去の事にして幸せになるんだ・・
紅もそれを望んでいる・・」


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