ある冬の日



体育館って広いから出入口まではわりと距離がある。



うちがそこまですたすた歩いていると、ぞろぞろとなんかの音が聞こえてきた。



徐々にこっちに向かってくる気迫。



この音はたぶん卒練のために体育館に移動中のみんなの足音だ。



タイミングわる。まじありえないっしょ。



そう思ったとき、同級生たちの姿が体育館の出入口に現れた。



あれは1組だ。



次々に列を揃えて体育館に入場してくるみんな。



てかなんでこういう学年で集まる時ってみんな静かに体育館に入場してくるんだろうね、全校で集まる全校集会のときとかはみんなガヤガヤうるさいのに。



うわうわうわ、1組の次は2組3組と途切れることなくみんな入場してきてるし。



みんな、立ち止まったままのうちを横切って椅子が並べられている場所に向かってる。



学年主任が椅子の周りでなんか言ってる。



入場するときは静かだったみんなもざわざわし始めた。



「あ、萌乃ちゃん~」



誰かがうちの名前を呼んだ。



声のする方を見ると、今うちの名前を呼んだのは同じクラスの梨華って子だとわかった。



うちのクラスも体育館に入場してきて、その時その子がうちに気づいたらしい。



列を抜けてその子がうちに近づいてくる。



その子はうちの手をひいた。



そして何か言ってる。



ヤバい、体育館出るタイミング見失った。



そう思った。



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