ある冬の日



だけど萌乃ちゃんは今のこの卒業式練習でクラスごとに中央から横並びで名簿順に座る決まりを守っていない。



私のクラスの女子で萌乃ちゃんはほんとは中央寄りの席なのに。



なのに萌乃ちゃんは未だに悪びれることもなく平気で1番端の私の左隣の里絵ちゃんの席に座ったまま。



男女でわかれると、最近学校に来ていない里絵ちゃんはこのクラスで名簿が1番最後。



そして私が最後から2番目になる。



そこは里絵ちゃんの席なのに……。



「では卒業式練習始めます」



やっと男子がきちんと自分たちの席に着けたみたいで、学年主任の先生が号令をかけた。



でもなぜかそこから学年主任の先生はみんなの前で長々と話をし始めた。



学年主任の先生の話を聞いていると、どうやら今日は6クラス全部で200人以上いる生徒全員通しての卒業証書授与の練習と、卒業式でうたう歌の練習を行うらしい。



「名前を呼ばれたときの返事はご家族の方や担任の先生方に自分の成長を報告し、感謝をするためにある。体育館全体に響く特に大きな声で返事をするように」



学年主任の先生が練習前に生徒全員に向けてそう言い終わると、やっと卒業式練習が始まった。



それにしても今はもう5時間目開始のチャイムが鳴ってから随分と時間が経っている。



……と、思う。



この学校の体育館には時計が無いから実際のところは今何時なのか正確にはわからないけど。



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