ある冬の日




「ごめん」



「えっ?」



「……次の休み、クラスの奴らと遊ぶことになってんだ」



日が完全に落ちた暗闇では、あかりがない限り梨華の顔を見ることができない。



それは梨華も同じで、梨華はいま俺の表情を見ることができない。



俺が嘘をついてる事にも気づいていない。



「そっか。じゃあまた近いうちに絶対デートしようね!」



「おう」



2人の分かれ道に着いた。



「じゃあまた明日ね!」



梨華が自転車にまたがる。



「じゃね~!」



「おう」



梨華はあっという間にその場から遠ざかって行く。



あ。



街灯に照らされている梨華の後ろ姿が見えた。



相変わらずヘルメットはかぶっていない。



その事で今日の朝担任に注意されたって言ってたし。



ま、でも帰りは先生たちも見てないから別にいいか。



梨華が曲がり角を曲がって姿が見えなくなった。



あー、何やってんだろ俺。



結局今日も別れ話を切り出せなかった、梨華に。



< 150 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop