ある冬の日
「ごめん」
「えっ?」
「……次の休み、クラスの奴らと遊ぶことになってんだ」
日が完全に落ちた暗闇では、あかりがない限り梨華の顔を見ることができない。
それは梨華も同じで、梨華はいま俺の表情を見ることができない。
俺が嘘をついてる事にも気づいていない。
「そっか。じゃあまた近いうちに絶対デートしようね!」
「おう」
2人の分かれ道に着いた。
「じゃあまた明日ね!」
梨華が自転車にまたがる。
「じゃね~!」
「おう」
梨華はあっという間にその場から遠ざかって行く。
あ。
街灯に照らされている梨華の後ろ姿が見えた。
相変わらずヘルメットはかぶっていない。
その事で今日の朝担任に注意されたって言ってたし。
ま、でも帰りは先生たちも見てないから別にいいか。
梨華が曲がり角を曲がって姿が見えなくなった。
あー、何やってんだろ俺。
結局今日も別れ話を切り出せなかった、梨華に。