ある冬の日



「わあいい匂い。それ苺の香りがするリップ?」



あたしの前の席にいる女の子が振り向いて聞いてきた。



「うん。ストロベリーの香りがするやつ。最近買ってもらったんだ」



「いーなあ。わたしリップはいつも安いのしか買わないからさ。そういう香り付きのやつって無駄に高いじゃん?」



「確かに」



この子、友美ちゃん。最近いつも携帯電話ばっかりいじってるから正直話しかけづらくてあんまりしゃべらないようにしてるんだよね。



現に今も右手に携帯電話持ったままだし。



授業中も先生たちの目を盗んでこそこそいじってるの、あたし後ろの席だからわかっちゃうんだよね。



携帯電話学校にもってきちゃ駄目っていう校則あるし、バレたら没収されるってわかってると思うんだけどな、この子も。



あたし学級委員だけどそういうの見ても注意はしない、てかクラスの人全員この子が授業中携帯電話触ってるって気づいてるし、別に注意したところで直ることとは思えないし。



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