ある冬の日
あたしがリップクリームのメーカーと商品名を教えると友美ちゃんは、
「ふーん。ねっ、わたしも今度それと同じの買ってい?」
と若干食い気味で聞いてきた。
うん。とあたしが答えると、
「ほんと!?ありがと嬉しい。じゃあ今度わたしもそれと同じの買ってみるね!」
と言った後、友美ちゃんはまた前を向いて携帯電話の画面に視線を戻してしまった。
またいつもの様に携帯電話をいじってる友美ちゃんの後ろ姿を見て、
かわいいし、性格も暗くはないし、もっと普通にしたらいいのに。
そう思った。
「千尋~!ねぇねぇ千尋、今度クラスで『思い出会』やろ~?」
朝だと少し耳に障る梨華の高い声が聞こえてきた。
ちょうどあたしの隣の席の男子が席を空けていたため、そこに梨華が腰をおろす。
「なに『思い出会』って。もっといいネーミングなかったわけ?」
「だってさ~。『お別れ会』とかだと寂しくなっちゃうじゃん?だから思い出会でいーの!」