ある冬の日



家を出る前にもう1度洗面所にある大きな鏡の前に立つ。



最終的な鏡チェックをした後に思うこと。



「あー、もう早く伸びてよ」



鏡に映る自分のショートヘアを見てそんな言葉を投げ捨てた。



女子バレーボール部に属していたあたしは、部活で邪魔になるからという理由でいつも髪を短くしていた。



別にショートヘア好きだし、髪を伸ばそうなんて思ったことなかったのに、最近は専ら早く髪を伸ばしたいと思うようになった。



「行ってきまーす」



冬仕様の制服にセーターを着てマフラーと手袋を着けてカイロを手に握りしめてきっちり防寒対策をしてから家を出発する。



「寒っ」



玄関を開けると一気に寒さが増した。



でもこれが自然な季節の寒さなんだけどね。



こんな寒さの中でも圧倒的な存在感を放つ太陽のオレンジ色には、なんだかここが暖かい場所なんだと錯覚させられる。



いつもと変わらないいつも同じ道を歩く。



けして都会とは言えないこの風景だけど、四季をシンプルに伝えてくれるから何気にすき。



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