ある冬の日
ウチは荷物をもってトイレに向かった。
中3にもなると1人でトイレに行くことに抵抗がなくなってくる。
中2の時は常に誰かと一緒に行ってたのにな。
何なんだろう、この心境の変化は。
「う~、寒っ」
教室を出て廊下を歩く。やっぱり廊下は寒かった。
こんなんだったら廊下にもストーブ置いてくれてもいいじゃんってマジで思う。
トイレの出入口を開けた。
「お、梨華。ヤッホー」「トイレまじ寒い」「あー、腹減った。てか腹減りすぎて気持ち悪い」
女子トイレはいつも混んでる。同級生たちが思い思いに言葉を発しているところに、水の流れる音も加わるから、教室よりも騒がしかった。
混んでる狭いこの女子トイレの空間でも、地味なグループと明るいグループははっきり分かれてる。
地味なグループの子たちはどこかうつむき加減で一言も言葉を発することなく早くこの空間から脱出することに全力で、
明るいグループの子たちは鏡の前や出入口付近で仲良い子同士でしゃべりながらケータイいじってたり、普通に大声で会話してたりと、とにかくこの空間に居続けることに全力で、
お互いがお互いを意識してないようで意識してる。