ある冬の日
4時間目が体育だと、軽くテンションが上がる。
「今日の給食カレーだってよ」
「よっしゃ!俺おかわりしよ~」
頭を使わなくても体を動かしていればそのうちすぐに給食の時間になるから。
こうやって体育館で仲間とバドミントンのラリーをしながらどうでもいいくだらない話で盛り上がれるって、実は相当価値のあることだと思う。
今は、何も考えないようにしよう。
オレのこの先の将来のこととか、見えない壁のことだとか、とにかくいろいろ。
「優也いくぞ~、俺の必殺スマッシュ!」
そう言って仲間が打ったバドミントンのシャトルは、見事にネットに跳ね返されていた。
「お前いいかげんにしろよなー」
体育の授業は遊びに近い。現にここにいる奴らが全員本気でバドミントンをしているとは到底思えないし。オレらだってそうだし。
体育の時間だけは、どことなく見えない壁がほんとに消えて無くなってしまったような気になる。
いつの間にかできてしまった、進路がもう決まっている奴らとまだ決まっていない奴らとの見えない壁が。