ある冬の日



もうすぐ、卒業だ。



中学を卒業したらこの道はもうあたしの通学路ではなくなる。



まだ行く高校がはっきりと決まったわけじゃないけど、いずれにしてもどの志望校の通学路にもこの道は含まれてないから。



そう思うと、高校なんか行きたくないって思う。



ううん、たぶん違うな。



まだ中学生のままでいたいって思ってるんだ、あたし。



何なんだろう、この気持ち。



早く高校生になってお洒落もしてバイトもして彼氏も作って高校生活楽しみたいっていう気持ちと、



まだこのままここに居て中学校のみんなとたくさん笑って馬鹿やってずっと一緒にいたいって気持ち。



でもきっと、2つともあたしの正直な気持ちなんだと思う。



……変なの。



家を出発してから10分位過ぎたとき、あたしはセーターの中の制服の胸ポケットからスティックタイプのリップクリームを取り出して塗り直した。



この時期のリップクリームの消費量は半端ないんだよね。



もともと唇荒れやすい体質でポーチにはいつもリップクリームを入れてるんだけど、冬はすぐに取り出せるように制服の胸ポケットに入れてる。



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