ある冬の日



「さとちゃんおはよー」



まずはあたしからさとちゃんに話しかける。



さとちゃんはあたしたち3-4組の担任で男の人。名前は島野聡(さとし)。担当教科は国語。49歳で最近やたらと自分の中年太りを気にしてるらしい。



縁のない眼鏡を掛けていてぽっちゃり体型なんだけど、そのどこかキャラクター的な要素が生徒から人気で、あたしと同じ3年生のみんなからは『さとちゃん』の愛称で親しまれてる、そんな人。



「おう千尋おはよう」



さとちゃんはあたしたちの名前を下の名前で呼ぶ、そんな人、だから。



「あ、そういえばさとちゃん知ってる?食事制限一切なしのダイエットがあるらしいよ」



「え!食事制限一切なし!?何それ凄いなそれ。どういったダイエットなんだそれ?」



結構話に食いついてきたさとちゃん。



「あー、今度教えます。あたしたちいま急いでるんで」



そう言ってあたしは梨華と一緒にさとちゃんから逃れた。



最後に梨華が、



「さとちゃん朝早くから、しかもこんな寒い中で大変だね。ほんとご苦労様です」



とさとちゃんを労うと、さとちゃんは機嫌を良くしてもうすっかり梨華にヘルメット着用を指導してた事を忘れてしまったみたいだった。



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