ある冬の日
高層ビルもなく頻繁に車も通らない、ただ田んぼと畑に囲まれただけのこの街がうちは嫌いだ。
遮るものがなにひとつないこの街にいると会話もぜんぶ筒抜けだし噂もあっという間に広がる。
こんな所、早く出ていきたい。
うちが吐き出したその叫びは、遮るものが何ひとつないこの街全体に響きわたり、そして、呆気なく消えてく。なんだかそれがあまりにも自然で、ムカついた。
それにしても今日はいい天気、バカバカしいくらいに。
こんな時くらい大雨でも降ってくれたらいいのに。
自転車のブレーキを引いてその場に立ち止まる。そしてそのまま目線を上にあげて空をみた。
見上げた空は一向に雨なんて降る気配もなくて、それがまた、ムカついた。
もうすぐ春がやって来る。
春になれば、少しはこの世界も変わるんだろうか。
だけどそう思ったときにはもう何事もなかったかのように再び自転車を漕ぎはじめてる自分がいた。