ある冬の日
体育館に着くと、こんな寒いのに入り口のドアが全開だった。
「あれ中ゼッタイ寒いじゃん」
覗くと体育館前方に式当日うちら3年生が座るパイプ椅子を、学年の先生たちが並べる作業をしてた。
ひょっとして、先生たちは卒練があるたびにこの椅子の準備をしてるのかな。大変そう、椅子の数6クラス分もあるし。
てかパイプ椅子って教室の椅子より高級そうに見えるよね。
「萌乃~。お前も一緒にバスケやらね?」
えっ。
反射的に声のする方を見た。
すると体育館後方の空いたスペースで、うちと同じ雰囲気のチャラチャラした男子たち4人組がバスケットボールをしてた。この男子たち、うちと同じ3年生。
この学校の体育館にはバスケットゴールはいくつかあるのになぜかバスケ部は存在してなくて、ずっとバスケットゴールが何のためにあるのか不思議に思ってた。
今はこいつらの遊び道具になっちゃってるし、もっと大切にされてもいいのに。せっかく学校っていう場所に設置されてるんだから。
もしこの学校がバスケの強豪校だったら、あのバスケットゴールもきっと喜んでボールを食べてただろうな。
今はチャラ男たちにバシバシボール当てられてて、なんだかかわいそうだ。
いくらヤンキー面してるからってカッコつけて上手くもないのにバスケなんかしちゃだめだってば。
その姿みてるとなんか惨め。
いい加減自覚しなよ。