ある冬の日



結局、男子たちの一緒にバスケやらないかという誘いは断った。



うちは体育館前方の先生たちが椅子並べをしてるところに向かった。そこに担任のさとちゃんが居たからだ。



って実際に本人に向かって直接“さとちゃん”なんて絶対呼ばないけど。



「おう萌乃。朝お前の家に電話したんだけど留守だったからさ。元気そうでよかったよ。うん。あ、今から学年で卒業式練習やるんだ。萌乃も椅子並べ手伝ってくれるか?」



よかった、さとちゃんから話しかけてくれた。ちょっとぎこちなかったけど。



うちは何も言わずに椅子を並べ始めた。



でもうちはさとちゃんに聞きたい事がある。



よし、聞こう。



「島野、聞きたいことがあんだけど」



椅子を運ぶ手を動かしながらさとちゃんに聞いた。



さとちゃんも椅子を運びながら何だと聞き返した。



体育館に響く、椅子の音と先生たちが動く音とバスケの音とチャラ男たちのうるさい声。



なんだかすべてが心地いい。



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