冷たいキミの愛しかた
事情をさらっと説明すると、
篠宮はふぅん。と興味なさげに
相づちをうって僕の手を握った。
「なっ………なななな何だよ?」
僕は努めて冷静な態度(?)で
篠宮に疑問をぶつけたけれど、
「黙りなさいな凡人」
の一言でぴしゃりと僕を
黙らせた後、僕の手を引いて
すたすたと歩き始めてしまった。
一年二組の教室の前で足を
止めると、躊躇なく篠宮は
扉を開けて教室へ入る。
「遅れましたすみません」
篠宮は教師にぺこりと
頭を下げた。
いまいちこいつがどこで
善悪の判断をしているのか
僕にはわからないな。
「篠宮に桜木だな?
席につけ、事情はわかっている」
教師は空席を指差して
淡々と指示を出した。
廊下側から3列目の
真ん中あたりの前後の席が
空席となっていて、
篠宮と僕は無言で席に着く。
篠宮は席に着くギリギリで
握っていた僕の片手を解放した。
教室中四方八方からの
視線が痛い痛すぎる。
しかも何だよこの席。
真後ろが篠宮だと?
振り向かなくても伝わる
篠宮の威圧感を痛いほど感じ、
僕は再びストレスで腹痛になった。