冷たいキミの愛しかた
背を向けて、
とんでもない行動に出た。
屋上のフェンスを、
安全用に取りつけられたであろう
そのフェンスを、
よじ登ったのである。
「………おい……?」
僕がやっとのことで
(間抜けな声だったが)喉から
声を絞り出した頃には、
篠宮はフェンスの向こう側に居た。
フェンスから"空中"までの幅は
実際のところほとんどない。
証拠として、篠宮の足は、
もう半分宙に浮いていた。
「何よ、桜木くん」
「何よ、じゃねえ!
何でそんな涼しい顔してんだ!
危ないだろ!」
「これから死ぬであろう人間の
危険を心配してどうするの?
そんなことより、自分の
心配をしたらどうかしら。
自殺する人間のすぐ近くに
居たとなると、色々と
巻き込まれてしまうわよ」
淡々と、
表情一つ変えずに、
彼女は言うのだった。
当たり前のことでしょう?
とでも言うように……
「……ふざけるなよ」
「?」
僕は篠宮の後を継いで
フェンスをよじ登った。
よじ登って、すとん。と
篠宮の横に足をつける。
実は僕は高い所が
あまり得意ではないのだが、
今はそんなことを考えている
場合ではない。