赤い月 参
「そなたもかなりの阿呆じゃ。
大吾、大吾、うさぎ、うさぎと、人の事ばかり。
このような時くらい、我が身を思って泣くが良い。」
祥子の肩に置いた景時の掌に震えが伝わる。
大きく見開かれた祥子の目から、大粒の涙がポロリとこぼれた。
一粒、また一粒、静かに静かに落ちる涙。
…
あら?
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
うさぎぃぃぃありがとぉぉぉ!!
ごわがっだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
全然、静かじゃなかったわ。
小柄なうさぎに覆い被さるように祥子が抱きついて、号泣する。
「いや、妾ではなく大吾の胸でだな…」
慌てるうさぎの声も、耳に入っていないようだ。
唇を噛んで我慢していた小鞠もとうとう貰い泣きを始め、うさぎに飛びつく。
もう、景時にはうさぎの足しか見えない…