赤い月 参

今日のうさぎ争奪戦は、景時には不利のようだ。

うさぎを餡にしただんごの周りを、景時が泣きそうな顔でグルグル回る。

男はカッコつけたがり。

でも、大切なナニカのために恥も外聞も捨てて足掻く男が、本当は一番カッコイイのかも知れない。

俯いて笑みを漏らした大吾が、薫に問うた。


「知ってたの? みんな?」


「あー… まぁ、な。
なんか隠してンだろうとは、思ってた。」


薫が眉を下げて頬を掻いた。


「でも、オメェなんも言わねぇから。
今日も、前田はいねぇわ、メールもないのはおかしいって桜木が言うわ、オメェは青い顔でうさぎサマばっか見てるわ…
悪ィケド、罠にかけた。」


「え…
じゃ、鬼神サンが一人でいたのって…」


「オメェを釣るエサ。」


なるほど。
全部掌の上だったワケだ。

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