赤い月 参
「うさぎ!!」
「笑い事では!!」
景時と水原の大声が重なり、うさぎは肩を竦めて両手で耳を塞いだ。
「うるさいことよ。
放っておけば良いではないか。
妾を怖れて逃げようが、殺しに来ようが、大吾と祥子の勝手であろう。」
「そんな…
あなたは彼らを…」
水原は泣きそうに顔を歪めてうさぎの肩に触れようとし…腕を下げて拳を固めた。
だがうさぎが白い手を伸ばし、彼の手を取る。
「人とは己と違うものを怖れ、忌み嫌い、排除しようとする生き物じゃ。
尚人、そなたに言われずとも知っておる。
だが、それで良いではないか。
妾がしたい事をするように、あの者らもしたいようにすれば良いのじゃ。
妾はそれを責める気はないし、服従させようとも思わぬ。
心は自由であるべきなのじゃ。」