赤い月 参
「おら、突っ立ってねぇで、早く入って着替えろ。
置いてくゾ。」
隣の部屋の鍵を開けながら急かす薫を、景時は恨めしげに睨んだ。
「ボクには使命があるンデスケド。」
「おー、カッコイイな。
明日から頑張れ。」
薫ちゃん、ヒドい。
でも…
デスヨネー?
張り込んでいた同僚から連絡があったのだ。
昨夜、やはり水原はある場所に向かった。
ここから数十㎞離れた、訪れる人も滅多にいない山の麓で、地図によると小さな池があるらしい。
その池の周りには見慣れない結界のようなモノが張ってあり、中の様子はわからなかったという。
ドラゴンの伝説などとは無縁の場所。
だが、水原にとっては魔術を使って自分以外の者を閉め出すほど、意味のある場所なんだろう。