赤い月 参
「そなた、龍泉(リュウセン)は全部引き揚げたのか?」
「ん?
んー… うんうん…」
うさぎの問いに、急に目を泳がせる蒼龍。
(わかりやすすぎンだろ。)
薫は横を向いて笑いを堪えた。
横を向いたら死体が目に入ったので、頭を一発はたいて蘇生させておいた。
「この山の麓に、龍泉があったであろう。
覚えておるか?」
「んんん? んー… んー…」
「うさちゃん、その『龍泉』って?」
鼻歌と化した蒼龍の言葉に被せるように、秋時が割って入った。
「文字通り、蒼が作った泉じゃ。
あの頃は今のように、蛇口を捻れば水が出るという世ではなかった。
雨が降らねば人々は渇き、雨が降ってもそれを溜める泉がない場所に住む人々はいつも渇き、水を巡って争いも起きた。
だから、涸れることない清い水を湛えた泉を、蒼が幾つか拵えたのじゃ。」