赤い月 参
「蒼は良い子じゃ。」
蒼龍の頬から手を離したうさぎは、今度こそ本当にニコリと笑って彼を膝に抱き上げた。
白い手で頭を撫で、目尻に伝う涙を指でそっと拭ってやる。
「泣くでない。
妾は怒ってはおらぬ。」
「…うん…」
「だが、その泉はなんとかせねばならぬ。
蒼ならば出来る筈じゃ。
そなたは強くて良い子じゃからな。」
「‥‥うん‥‥ぅふふ」
「では、先ず泉の様子を見て来るのじゃ。
どのような状態なのか確認して、すぐ戻れ。
待っておるぞ。」
「うんっ!!」
さっきの涙はどこへやら。
蒼龍は心から嬉しそうに頷いた。
うさぎが褒めてくれるなら、なんでもしそうな勢いだ。
コレが飴と鞭?
巧みすぎンだろ。
(コイツ絶対尻に敷かれる。)
うさぎの膝に乗った蒼龍に恨めしげな視線を送る景時を、秋時は気の毒そうにチラリと横目で見た。